alone in the night

In the dark, in the quiet.

book:トガニ 幼き瞳の告発

 久しぶりに図書館へ赴き本を借りた。感染拡大対策なのかバーコードの付いた貸出券をスキャンしないと入館できない仕様になっていた。もし図書館から感染者が出たら検査しないといけないのかな。嫌だな。

 

(以下ネタバレ)

 

 実際に発生した事件を元にした小説で、実話に忠実なのか小説のラストは妙にリアルな終わり方だった。大団円とはいかない。犯人は執行猶予になったので即復職し矢面に立った主人公はクビ、霧の街を去った。新生慈愛学院で再び教壇にたつなんて私の考えは甘かった。

 被害者たちは転校し、支援する大人があつらえた寮で暮らしている。貧しさゆえお金に勝てないところや、今は裕福であろうユジンの元夫がユジンや自分の娘たちに何の援助もしていない(と思われる)あたりや、ユリの母親やミンスの両親が最後まで出てこないのもリアル。小説では創立者一族のハゲオヤジたちとホモ教師しか捕まっていなかったけど、ユン・ジャエのように本当は他にも悪徳教師いたのではなかろうか。手を出していなくても雇用主かつ街の権力者であるハゲオヤジが怖くてみんな見て見ぬ振りをしていたのは事実。

 裁判でヨンジュが校長に連れて行かれて暴行されたと証言するシーンで、同じ服を着た双子の被告(ハゲオヤジたち)のどちらが校長かと尋ねられたときのヨンジュの機転の良さはさすがだった。保身のための手話だけは学んだクソ校長。

 保身に走らざるを得なかった産婦人科医の診断書のシーンも印象に残っている。

 創立者(ハゲオヤジたちの父親)が病床とはいえ生きていたことも地味にびっくり。何も聞かされていなかったのかな?それとも、特に描写はなかったけど創立者も息子たち同様聴覚障害者を軽蔑し被雇用者に賄賂を要求していたのだろうか。

 慈愛学院の職も、そのあと恐らく手にしただろう職も、どちらも妻が手はずを整えていることに主人公は思うところないのかな。被害に遭った子供たちのために全力を尽くした主人公が、聖人君子に描かれていないことが珍しいように思えた。だからこそ自分の立場を省みず権力に立ち向かった姿が輝くのかもしれない。

 とはいえ全教組のことはNOと押し切るべきだったし、元教え子とやすやすと関係を持つべきでは無いよな。勝手に結婚相手に指定したミョンヒも変で迷惑だけど。とにかく教え子に手を出してはいけない(戒め)。結局ミョンヒは両親に責められ、大学には合格できず、先生にも裏切られて絶望してしまったのだろうか。悲しい。

 ソン先生はどうなったのだろう、私が読み落としているだけで何か書いてあればいいけど。それにしても聾学校の教職員が手話が出来なくてよく授業が出来たな。

 最初何も知らずただ手話通訳に駆り出されたが事件に関わる内にラストで男子寮の面倒を見ていた手話通訳士が童貞という情報が地の文で出てきたときはちょっと笑ってしまった。笑うところではないし、女性経験が無いゆえに少女の暴行被害の告白が重くのしかかったということだろうけど。

 

 最後に、小説の内容とは関係ないが個人的に印象深い言葉を忘れないよう載せておく。

捕まるのは悪いやつではなく、愚かなやつだということだ。

トガニ 幼き瞳の告発 p139より