alone in the night

In the dark, in the quiet.

book: はるかなる岸辺

5章に分かれている長い小説だった。頻繁に場面が変わるので注意して読まないと訳が分からなくなった。1行空いたと思ったらその先は回想の続きが始まっていたり。ろくでもない人物が脇にわらわらいた。

 

舞台はイングランドの田舎。教職を早期退職し1人で暮らすドロシーの話。

お洒落なヨーロッパの田舎の情景が頭に浮かんだ。ただし車社会なので不便。ソロモンの話し方が落ち着いていて、不器用な優しさが覗いていた。

ドロシー父は典型的な前時代のオッサンなんだろうな。介護してくれていた助産師さんは本当にご苦労だった。母も頼りにはならなさそうだし、シーラが家を出たのもうなずける。

 

ガブリエルという名前の人物の話。舞台はアフリカ~ヨーロッパ。

ガブリエルは亡命するために2000ドルが必要と叔父に言われ、元雇用主のフェリックスを殺害して金銭を奪う。2000ドルに達していなかったけど叔父と亡命できたのだが、強盗殺人シーンが嫌いな私はこの時点でガブリエルに何があっても同情できないと思った。金銭・快楽目的の殺人や、そうでなくても殺さなくてもいいのに殺すシーンが私は大嫌いで、ここもフェリックスとその命を軽視しているように見えた。だが後になってガブリエルは夢でフェリックスが出てきて、後悔し苛まれていることがうかがえたので嫌悪感は緩和された。

亡命の旅路&亡命前の軍隊時代の話で沢山の登場人物が出てくるのだが、結局最後は1人。一瞬だけ出てきたエマニュエルだったかいう金パクリマン嫌い。

純粋な読者なので、最後ガブリエル=ソロモンだと発覚して「そういうことか~!」と驚いていた。

 

またドロシーの話。ドロシーはつくづく男運が無い。ブライアンはあまりにも身勝手。雑貨屋マハムードはただのクズで妻共々下層臭くてろくでもないし、臨時の地理教師ジェフの被害者面はキッツい。ドロシーのコンプライアンス違反があったとはいえ、地理教師が学校に必要だからと校長はドロシーだけを追い出す。ドロシーがジェフの妻に電話を掛けたりジェフに手紙を書くことは問題でも、不倫は問題じゃないんだね。

とはいえマハムードやジェフを既婚者と知っていて関係を持つドロシーもどうかと思う。寂しかったのだろうことはなんとなくわかる。両親も死に、シーラはガンで早世してしまう。

強盗被害に遭ったシーラが犯人を訴えなかったのは訴えたって何も変わらないから?何も変わらないのならとりあえず訴えればいいだろうけどそんな元気も無かったのだろうな。犯人に反省の色なく、結局お金も何も返して貰えなかった。

シーラも昔彼氏を捨てたとはいえ、その後に交際したマリアはシーラを捨てて男と一緒になっているにもかかわらず、『こんなことになって悲しい』というのは訳が分からなかったし、葬式の後に2人でやってくる神経もわからなかった。

 

Ⅳ、Ⅴ

舞台はイングランド、ガブリエルがソロモンになった後の話(Ⅱの続き)と、Ⅰの続きの話。亡命仲間の消息が不明な中マイクやアンダーソン夫妻に恵まれたソロモンは幸せ者だと思うが、一方デニーズに手を出していたことが判明してガッカリした。てめえクロじゃねーか。Ⅱで「眠っただけ、何もしていない」との発言を信じちゃってたから…。毒親に捕まったデニーズはどうなっただろう。証言もしたくないのはわかる。自分も責められるから。

 

はじめはで謂われなき差別に遭う物静かな黒人だったソロモンが、章を追うごとに結構やらかしていると判明して幻滅するなどしたが、最期はイングランドの田舎のヤンキーに、ソロモン=ガブリエルのその背景を知らずにただ肌の色で色々決めつけて迫害しているだけの人々に殺されて終わり、というのは呆気なかった。ドロシーもソロモンの背景を一切知らないけれど、迫害なんかしない。

ドロシーもいよいよ精神病院に入院してしまう。ドロシーは気を揉んでいたがソロモンに家族はもう居ない。妻に捨てられたブライアンが今更のように見舞いに来ていたけれど、ドロシーにも家族は居ない。