alone in the night

In the dark, in the quiet.

book:マクダ

『ロリータ』の原型となった作品。中年男が若い女に惹かれ、身を滅ぼす点では似ているが、本作は単なるだめな中年男の愚かな浮気話という感じで、『ロリータ』のような狂気がなかった。以前読んだ『ロリータ』や『アーダ』に比べたらわかりやすい内容だったが、後味の悪い結末だった。

 以下ネタバレ

クレチマル

クレチマルが旧友の小説でマクダとホルンの関係に気づいたのは、前々から2人の関係に薄々気づいていたからだとしか思えない。でないとあれで気づくわけない。旧友は2人のことを知らないのだから。

ホルンを追い出すかマクダを諦めるかしておけばよかったのに。裏切られていると感じても身を引けないのかな。悲しい。しかもマクダは最初からクレチマルに好意など寄せておらず、結婚してくれたら立場が安定していいな、くらいでしかなかったことがより悲しい。心は一度自分を裏切った醜男ホルンの物だったことが。ホルンもホルンでマクダが本当に好きだったみたいだし。仲間はずれの哀れなクレチマル。家庭を裏切らなければよかっただけの話なのだけど。

 

その後の暴走もマクダと心中するつもりだったのだろうが、心中の完遂よりつらい結末に終わってしまう。あそこで死んでいた方がまだよかった。盲目になってマクダとホルンにもてあそばれ一旦はもといた家に帰るが来訪者の手引きでマクダの元を再び訪今度こそ射殺しようと試みるものの盲目でうまくいくはずもなく。あっけなかった。

 

マクダを射殺して刑務所エンドのほうがよかったと思ってしまったのだけど、盲目のまま犯罪者として妻義弟にも見捨てられるのとあそこで死ぬのはどちらがつらいのだろう。失明がわかった時点で酷く落ち込んでいたし、そこからクレチマルが明るくなることはなかったけど、彼は死にたかっただろうか。

 

かわいそうといえば、夫に裏切られ娘に先立たれたアネリーゼもかわいそうなのだが、支えてくれる弟がいるからまだいい。夫がいなくなって生活が困窮したような描写もなかったし。

 

マクダ

本作の時代の女性は男性に依存しなければ生きていけなかったのだろうか。子守や家政婦もいたし必ずしもそうではないと思うのだがマクダはそういう生き方はしたくなかったのだろうな。ホルンとの再会まではそんなに嫌な感じがしなかった。妻と離婚してくれないクレチマルに焦りを感じるのも仕方ないし、クレチマル失明事故だって彼女だって死んでいたかもしれないから献身的になれないのも仕方ない。ホルンはクズだけど彼女はそこまで悪女だと思えないのは何でだろう。最後も過剰防衛程度だし。

生い立ちと、映画上映のシーンはかわいそうだった。ドリアンナは性格悪いと思ったけれど成功してる女優なんて大体あんなもんか。

 

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主な登場人物一覧に、ほんの少ししか出てこないし重要人物でもないキャラクターを載せるのはいかがなものかと思った(笑)。人物紹介はクレチマル、マクダ、ホルン、マックス、アネリーゼだけでよかったのでは。