alone in the night

In the dark, in the quiet.

book:ロリータ

精緻極まるパズルのような名作と言われても、読解力が無いからものすごい俗な感想しか浮かばない。わからない点もあるし勘違いしてる点も多々あるだろう。にも関わらずネットに名作の感想をあげる浅はかさ。

ただ官能小説扱いをするのは間違っているので未読なのに決めつけてはいけない。

(以下ネタバレ)

 

ロリータは女優になれなかった上クィルティに騙されて、逃げたものの結局退役軍人と若くして結婚し子供孕んで騙してまで去ったハンバートに金の無心をした挙句出産で死んだ。腹の中の女児(男児でないというところがポイント)も死産で、ハンバートの知らないところでもニンフェットになることはない。まあ成長してもアラスカが極地に該当するならハンバートの言う所のニンフェットにはならないけども。ロリータはハンバートに人生をめちゃめちゃにされた被害者のはずなのに、なぜか夢も叶えて幸せになってたり長生きしたりしてたら違和感を感じる。でも不幸の象徴でもない。

ただし、ロリータは文中にもあるように勇敢だとも思った(ハンバートはそういう意味で勇敢と評したわけじゃないだろうけど)。ハンバートから逃げ、キルティに捨てられた時14歳。頼れる大人がいない。フェイがいて一人ぼっちじゃなかったとはいえ、何も持ってない中頼み込んでおそらく住み込みで皿洗いしてかろうじて生活してた事実って、1949年のアメリカでも壮絶な類だよね。元々は新興住宅地の家で通いの女中までいて、学校に通いながら母親と暮らしてたどこにでもいる少女だったのに…。ハンバートから去ってから再会するまでの出来事はハンバートの手記である本作には当然殆ど描かれないので読み飛ばしがちだけど、その点においてはロリータは精神的に強いと思う。

 

ハンバートはインテリな上モテたのにニンフェットに執着しすぎて人生を破滅させた上最後には殺人をしておそらく肩書きも失い収監、公判前にキモい文章残して病死ってのは良い。ロリータがハンバートから逃げるためにしらばっくれたり嘘をついたことへの「世の中ってそういうもんじゃないの」は、ロリータを騙してアメリカ中を2年も連れ回したことの因果応報感があって良い。しかもロリータが本当に好きだったのはクィルティだけで、現夫ディックは一緒にいてとても幸せだけど「それとは別の話」だし、ハンバートに至っては。

ハンバートは自身が姦淫以外の面でローにしたことの重大さに最後の方で触れるけど、手遅れなんだよなあ。そしてローに長生きしてほしいと願うけども叶わない。

 

シャーロットは子供を顧みず(本心はそうでなかったかもしれないけど、ハンバートと自分の生活しか考えてないように見えた)男にうつつを抜かした上騙されていたことに気づき絶望と怒りの中車に轢かれて死ぬし、イかれたクィルティはハンバートに殺される。主要人物が全員堕ちてから死んでる点が好き。

 

ヴァレリアとその夫が人権無視の実験の被験者になっていた、は嘘だと思うんだよなあ。1945年以前ならそういう実験は可能だっただろうけども、多分話した人がハンバートの気を落ち着かせるためかなにかで適当に言ったんだと思う。1945年のヴァレリアの産褥死すら人伝てに聞いた話だし。ロリータの運命の暗示としてのエピソード?いや話の本筋に関係ないしどっちでもいいけど。

 

何箇所もハンバートにムカつくシーンはあれど、最後のアイヴァーに甥の居場所だけ聞いて治療はおたくより上手いところでしますと言って去るシーンとチャットフィールド夫人と会話した時がムカついた。夫人が好奇心で言ったことほぼほぼ図星でイライラしたんか?しかも文法の指摘とかウザいし。チャーリー少年の哀れな顛末も要ったんかあれ?あとファーロー夫妻にローが実の娘だと信じ込ませるところの嫌悪感すごかった。ファーロー夫妻も、どっちでもいいんだろうけどアホすぎん?死者(シャーロットとハロルド)を冒涜してる。

 

夫人の娘フィリスは(おそらく)順調に成長し18歳だけど、おまえんとこのロリータは色んな男の◯◯◯になった上皆が学校行ってる間に◯◯◯◯未遂からの皿洗いで17で既婚、妊婦やで?ハンバートの責任は大きい。元は同じ学校のクラスメイトでもこんなにも運命は変わる。ロリータと仲良くしてたメアリーローズや元々ハンバートが下宿する予定だったマックー家のヴァージニアはどうしてるんだろう。考え方が古いから気になっちゃう。

 

ジーンがハンバートに本当に気があったとは思いたくないなあ。あんなの誰にでもやってそう。でも、ハンバートに心動かされていたジーンの死後ジョンが再婚した(さらにジーン生前に仲良くしていた故シャーロット絡みの案件を面倒臭がって知人に譲った)ように、本当はクィルティしか好きではないロリータの死後ジャックはほぼ確実に再婚するなどと考えた。女は他の男に心があり、その女に男が先立たれる点で一致してる。いずれの夫妻に再婚の足かせになりうる子供はいない。男はそれに気付くかのように再婚して死んだ女を忘れる。

 

ジョンは、(ロリータがハンバートの実子だと思ってるから余計に)ハンバートがいつまでもシャーロットの死から『立ち直らない』ことに辟易しただろうし、ヘイズ家の案件やってられないのはわかるけど、私もハンバート同様敬虔な男寡でいるものだとばかり思ってて…ジョンが亡妻ジーンを忘れるように若い女と再婚して海外移住、亡友シャーロットを忘れるように面倒な案件を人に譲るの寂しいです。でもこれは案件を全てウィンドミューラーに譲るというメタ的な理由だけでなく、時間の経過も表してるよね。でも私はジーンが心残り無く逝けたかどうかすごく気になる……。あとガストン・ゴタンも好きな登場人物なので、醜聞?に巻き込まれて帰ってこなかったとかいう結末は寂しいなあ。

 

初読時はヘイズ家の女中とウィンドミューラーの娘が同一人物なのかと思ってた。ウィンドミューラーの娘はラムズデール時代のロリータの同級生であり、学校に通ってる12歳に女中なんて出来るわけもないので同名なだけの別人。なんでこんなどうでもいいところを同じ名前にするの?こんなことで混乱するの私くらいだろうけど。(ビルも2人いるが、そちらはさすがに混同しなかった。)

 

今度は英語版と同時に借りて気になる箇所を原文と比較して読み進めるつもり。